ADHDは医学的な診断基準で判断され、現在は国際的な診断基準、DSN-IVとICD-10の2つが用いられます。診断は、家庭と学校といった2つ以上の場所で場面に関係なく、不注意、多動性、衝動性の3つが年齢不相応に著しく認められること、7歳未満に発生し、6ヶ月以上続くことなどを条件に判断します。
ただ、この診断は客観的で明確なものではなく、あくまで面接による情報と診察室での行動観察を中心に保護者から得られる生育暦や関係者から得られる情報を加味して医師が総合的に評価しているのが現状です。
気付きのポイントとしてはやはり「何かが違う」といった保護者や現場関係者の感覚が確かです。それぞれの発達時期に見られる特徴的な言動の例は下記です。
気難しく、よく泣き、かんしゃくを起こしたり抱っこを嫌がることが多く、育児に疲労感と困難さを感じたという保護者が多く見られます。
多動性が目立ち始め、行方不明や道路に急に飛び出すなど保護者は気の休まるときが無く、なんらかの違いの感覚を覚えることが多いようです。わがままで言葉も遅く、対人関係面でも乱暴さが目立ち、保護者からの否定的な思いが強まることも多いようです。
保育園・幼稚園で、集団行動が取れない、せっかちな行動を取る、なんど注意しても聞かない等困った行動として見なされます。遅れていた言葉が急激に伸びてくるころで思ったことをすぐに口に出してしまう困った言動も目立ちます。集団になじめない、仲間はずれ、チックや抜け毛、吃音(どもり)などが出ることもあります。
小学校低学年期と違い、ADHDの基本症状が目立たなくなる場合もあります。しかし、人間関係の構築が苦手、いじめられる、いじめる等で友人から孤立したり、劣等感を感じることも増えてきます。学習不振を招くこともあり、自己評価が下がっていくことにもつながります。行動面では顕著な反抗期や度重なる叱責を逃れるためにつく嘘、家族に対する暴力、金品持ち出しなどが出ることもあります。基本症状よりも二次的な情緒・行動上の問題の方が目立つようになってきます。
二次的な問題は思春期に至ってさらに複雑化していきます。学習意欲はさらに低下、途中で投げ出してしまったり、そもそも取り組まなくなったりといった無気力さや投げやりな態度が出てきます。保護者や大人との衝突も多く見られるようになり不登校、引きこもり、自傷行為等が見られます。生きにくさの実感、低い自己評価観が問題になってくる時期です。
このようにADHDのある子どもは、抱える課題が発達に従って変わっていきます。特に小学校低学年までは、多動等の基本症状が中心ですが次第に二次的な問題が大きくなってくる場合が多く、そちらにも留意が必要です。